それらの疑問を現役の化学メーカーで10年以上研究開発職に従事している筆者が解説します。
これを読めばメーカーの研究開発職のイメージが湧くと思いますよ!
研究開発職って一体なに?
実は、”研究”と”開発”で少し意味合いが異なります。
それらは以下の記事で解説していますので、よければご覧ください。
ここでは、研究開発職という一般的に使用される広義の意味で説明します。
あくまで筆者の考えですが、
研究開発職とは、世界にとって”新しい技術や製品”を生み出し、競合他社と戦える”武器”を与える職種のことです。
ぱっと聞いてわからない?ー大丈夫です。きちんと解説します。
世界にとって”新しい技術や製品”を生み出す
研究開発は0から1を生み出し、1から10にする仕事と言われます。
具体的に解説します。
世の中には、たくさんのモノが溢れていますよね。
例えば、みなさんが使用しているパソコン(PC)。
私が生まれたときはPCというものはありませんでしたが、今では世の中に溢れています。
これは多くの研究開発者がたくさん仕事をしてくれたからです。
PCは、モニター、キーボード、OS、CPU、メモリー、HDDなど、たくさんの部品から成り立っていますよね。
部品の元を辿れば、例えばモニターの液晶にも材料としてたくさんの有機化合物が使われています。
その液晶の材料に使われる有機化合物を化学メーカーは扱っています。
大元の材料から、液晶モニターを薄くしたり、解像度を上げたりするのに貢献するのです。
私たちが普段生活しているときは、完成品しか目につかないですが、完成品になる過程にはたくさんの部品が存在しているのです。
そして、これら一つひとつの部品や材料に研究開発が関わっていると思ってください。
これらが、一つひとつの仕事が研究開発職の仕事です。
世の中に無い新しい技術を生み出したり、今ある製品をアップグレードしたり、その繰り返しでみなさんの生活が豊かになっていきます。
会社に販売する”武器”を与える
新しい技術や製品を生み出すことは何を意味するのか?
大きな意味では世界の発展に貢献していると言えますが、小さな意味では会社の売上に貢献していると言えます。
会社の売上を伸ばすには、新しい技術や製品で、競合他社と闘いながら勝ち抜かなければなりません。
つまり、競合他社と闘う”武器”が新しい技術や製品となります。
武器が弱いとどうなるでしょうか?
ー当然敗北してしまいます。
したがって、競合他社に勝つために、少しでも強い武器を作ることが研究開発職の役目なのです。
研究開発職は普段どんなことをしているの?
研究開発職は、毎日、実験や分析を繰り返していると想像されるでしょうか。
実は、意外にも多種多様な業務があるため、実験や分析に入り浸っているわけではありません。
もしかしたら、デスクでPCの前に座っていることの方が多いかもしれないです。
本当は、実験や分析を繰り返すだけの方が楽なのですが、会社では成果が問われます。
その成果とは、アウトプットです。
アウトプットの形は様々ですが、報告書、論文、特許あたりは定番と思います。
このアウトプットの作成に多大な時間がかかります。
あくまで筆者のイメージですが、実験・分析とデスクワークの比率は下図のような感じかと思います。
若いときは実験や分析業務の割合が多く、年次が上がるにつれ実験や分析業務はほとんどやらなくなっていきます。
もちろん、会社と部署によっても様々だとは思いますので、あくまでイメージです。
若手の内は、手となり足となり経験を積ませることが多いので、実験や分析業務の割合いが高めです。
反対に、よく「実験とかやりたいー」と呟いている管理職の方は多いです。笑
研究開発職のやりがいとは?
研究開発職のやりがいは様々と思いますが、個人的に一番やりがいを感じる瞬間は、
自ら関わった技術で開発された製品が世の中に出回ったとき、です。
自ら関わった技術で開発された製品が、身近にあると感じた時の喜びは格別です。
目に飛び込んできたときに、「あー、ここにある製品、自分が開発した技術が使われているんだなー」と一人喜びを嚙み締めます。笑
私は幸運なことに、いくつかの技術を世に送り出してきました。
皆さんがよく使用している製品(具体的には言えませんが)にも、私の関わった技術がたくさん使われています。
なので、このやりがい、喜び、達成感を身に染みて体感しています。
市場に出る技術を創り出すことは容易ではありません。
業界や製品によりますが、数多の失敗をし、幾多の没製品を生み出し、何年~何十年かけて挑んだ成果です。
また、化学メーカーの場合、最終製品として一般的に目につく製品を作製している企業は多くありません。
おそらく、最終製品に使用されている材料や部品を作製している企業の方が多いでしょう。
それでも、自ら関わった技術が市場に出回っているととても嬉しいものです。
これは、製品化し市場化するまでの苦労を知っている研究開発職ならではやりがいと思います。
研究開発職の職場ってどんな感じ?
残念ながら、皆さんが憧れる綺麗な建屋・研究設備というのは、ごく一部だけです。
筆者も色々な研究設備を訪れたことがありますが、たとえ大企業であっても、何十年前の古い研究設備をずっと使用している場合が多いです。
これには理由があり、研究や実験に用いる設備や器具の更新や移設が非常に高額だからだと思います。
例えば、営業オフィスの移転ならテナントを契約して移動するだけですが、研究設備は簡単に移動出来ません。
研究設備は何十万~何億の機械ですから、移設するのにも購入と同額と費用がかかったりします。
そのため、簡単に移転出来ず、昔ながらの建屋の中で研究設備を設けているというのが現状です。
もちろん、新しく研究設備を建設したりもするので、そういった企業であれば綺麗な建屋・研究設備のもとで働けると思います。
まとめ
研究開発職の仕事内容、やりがい、職場環境について解説しました。
少しでも参考になったでしょうか?
研究開発職がどんなものか少しでも理解頂けたのなら嬉しいです。