企業と大学の研究の違いは、たった一つ|両方経験した研究員が解説

研究開発

みなさん、企業と大学で行われている研究の違いは何か知っていますか?

  • 大学で研究しているけど、企業の研究も同じなのかな?
  • メーカーに就職したらどんなことをするんだろう?想像できない…

こんな疑問を解決するため、企業と大学の両方で研究に携わった筆者が解説します。

※本記事は化学系の研究室、化学メーカーでの経験から得た知見です。

企業と大学の研究の流れは基本的に同じ

結論から言うと、企業と大学の”研究の流れ”は基本的に同じと考えていいでしょう。

  1. 研究テーマが与えられる
  2. テーマ内容について、文献調査をする。
  3. 仮説や目的を立て、実験・分析する
  4. 得られたデータを解析する
  5. データから次の仮説や目的を立て、実験・分析する
  6. ある程度データが溜まったら、アウトプットをする(報告書や論文など)

上記の繰り返しです。

年度始まり(4月)に研究テーマが割り振られ、後は調査、実験、分析、解析、アウトプットを繰り返すわけですね。

したがって、基本的に企業と大学の研究は同じと考えて差し支えないかと思います。

もちろん、細かな部分で違いはあります。

例えば、アウトプットの形として、企業の方が多種多様です。

  • 企業|特許出願、社内報告書(社内の技術蓄積用資料)、社外報告書(客先へのプレゼンテーション資料等)、論文の寄稿、論文発表など
  • 大学|卒業論文、修士論文、論文の寄稿、論文発表

大学で学んだスキルというのは、必ず企業においても役に立ちます。

研究開発職として修士卒を採用することが多い理由は、企業で役立つスキルをある程度経験してきているからです。

このように企業と大学の”研究の流れ”という意味では似ているのですが、個人的に1点だけ企業と大学で決定的に異なる根本的な点があると感じています。

企業と大学の研究において決定的に異なること

結論はシンプルです。

利益を求めるか利益を求めないか

この1点につきます。

企業の研究は利益を追求する、大学の研究は利益を追求しない、ということです。

もちろん、企業や大学、分野において多少異なることもありますが、大部分は当てはまるかと思います。

企業で利益を追求する理由|利益を得ないと倒産してしまうから(当たり前ですね)

企業は価値あるものを提供・販売し、利益を得て、その利益から次の価値あるものを創造することで成り立っています。

仮に利益がない場合は、やがて従業員の給料が払えない、商品を製造出来ない、次の価値あるものを創造できない、などなど、会社は倒産に向かってしまいます。

学生の方は利益という概念を考えたことはあまり無いかもしれませんが、社会に出る上ではとても大切な視点です。

大学で利益を追求しない理由|利益を得なくても成果を出せば続けられる

大学の研究費用は、学生の授業料、国や都道府県などの支援などから成り立っています。

そのため、基本的に一定の額というのは確保されているわけです(大学の運営が正常なら)。

得られた資金を何に使おうか考えて、A研究室に〇〇万円、B研究室に〇〇万円と配分していくわけですね。

大学は研究した内容を販売して利益を稼ぎ、それを元手に運営しているわけではありません。

大きな成果を出した場合は潤沢な資金が流れてくるので、成果を出すこと自体は非常に大切ですが、そこに利益を得ようという思考はないかと思います。

企業と大学の研究スタイル

利益を追求するかしないかは、研究スタイルにも違いが現れます。

企業は利益を追求するために、テーマの納期が設定されています。

大学だったら、1年でここまで出来ました!という内容で十分と思いますが、企業の場合は1年でここの目標まで達成して下さい、というテーマが多いです。(もちろん、往々にして達成できない場合もあります)

具体的には、2年後にC目標を達成したいが、その過程にはA目標とB目標を解決しなくてはいけない、という場合、6ヵ月でA目標→1年でB目標→2年でC目標という風に、段階を踏んで目標を決めて、そのために実験や考察を繰り返します。

仮に1年でB目標を達成出来なかった場合、もう少し時間をかければC目標を達成できるのか、そこに人件費は割けるのか、という観点から、研究テーマを継続するのかしないのか選択が迫られます。

時間をかけてもC目標を達成できない、もしくは人件費等を考慮してそこまで達成する必要がないと判断された場合は、容赦なくテーマが打ち切られます。

このように、企業の場合は、”時間当たりの成果”というものが求められます。

一方で、大学はそこまで時間の制約を設けて研究テーマを決めていない場合が多いように感じます。

そのため、Aさんが1年でここまで成果を上げてくれたから、来年はBさんに引き継ごう、みたいなところが多いですよね。

結論|企業と大学の研究に違いについて

研究の流れは基本的に一緒

利益を求めるか求めないか、が異なる

  • 企業|利益を求めないと会社が倒産してしまうため、利益を求める
  • 大学|一定の研究費が確保されているため、利益を求めない

その考え方は、研究スタイルに影響が出る

  • 企業|目標と時間を設定されて研究を行う
  • 大学|時間に縛られずに研究を行う

以上、企業と大学の研究の違いについて解説しました。

みなさまの疑問の解決に役立ったのなら、とても嬉しいです。

※本記事は化学系の研究室、化学メーカーでの経験から得た知見です。当てはまらない場合もあるかと思いますので、その点はご了承ください。

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