「ここも重要だから赤!」「このグラフは青!」「こっちは緑!」 ……気付けば、あなたのPowerPointスライドが「虹色」になっていませんか?
かつての私もそうだったのですが、PowerPointやExcelの「デフォルトの色」をそのまま使っていると、あっという間にスライドがカラフルになってしまいます。
周りも同じように作っているため違和感を抱きにくいのですが、実はこれが「伝わらないスライド」の大きな原因です。
今回は、スライドを劇的に見やすく、かつ洗練されたデザインに変えるための法則、「3色ルール(色の引き算)」について具体的に解説します。
💡あわせて読みたい:全体像を知りたい方へ
本記事は、資料作成のノウハウ「引き算の法則」の第一弾です。全体的な考え方については、ぜひこちらの記事も先にご覧ください。
色を足すほど「視覚のノイズ」になる
私たちは「目立たせたい!」と思うと、つい新しい色を使って強調しようとします。
しかし、使用する色が4色、5色と増えていくと、聞き手の脳はどうなるでしょうか?
「結局、どこが一番重要なの?」 「色がチカチカして内容が頭に入ってこない……」
人間の目は、色が多すぎるとどこに焦点を当てていいか分からなくなります。
つまり、良かれと思って足した色は「強調」ではなく、単なる「視覚のノイズ」になってしまうのです。
デザインにおいて色は、「引けば引くほど、残った色が際立つ」という性質を持っています。
スライド作成の鉄則!使う色は「3色」まで
情報を整理し、一番伝えたいことを瞬時に届けるための理想的な色数は「3色」です。 具体的には、以下の3つの役割に分けて色を設定します。
1. ベースカラー(白・グレー)
スライドの背景や文字の色となる、いわば「土台」です。スライド全体の70%ほどを占めます。
2. メインカラー(青や紺など)
スライドの「主役」となる色です。全体の25%ほどの割合で使います。
3. アクセントカラー(オレンジや赤など)
ここぞという時にだけ使う「スパイス」です。全体の5%未満に抑えるのがコツです。
実例で解説!「NGグラフ」を「OKグラフ」に変える3ステップ
先ほどの「3色ルール」を踏まえて、実際のグラフ(ドーナツグラフ)を例に、どのように色を「引き算」していくのかを見ていきましょう。

Before (NG例):色が多すぎて主役が迷子に
左側のNG例のグラフでは、項目AからFまで、すべてに異なる色が使われています(5色以上)。
ExcelやPowerPointでグラフを挿入すると、デフォルトでこのようなカラフルな配色になりがちです。
見た目は華やかかもしれませんが、これでは「結局、どのデータが一番重要なのか」が全く伝わりません。聞き手の目はあちこちの色に分散してしまい、情報の理解に時間がかかってしまいます。
After (OK例):「3色以下」に絞ってメッセージを明確に
右側のOK例では、全体の情報量は同じまま、色数を「3色以下」に抑えています。NG例からOK例へ、具体的にどのように色を引き算したのか、3つのステップで解説します。
- 重要度の低い項目を「グレー(ベースカラー)」に落とす
まずは、割合が比較的小さい項目(D、E、F)の色をすべてグレーに変更します。目立たせる必要のない情報を「背景化」することで、グラフ全体の視覚的なノイズを一気に減らします。 - 基本となるデータは「メインカラー」でまとめる
次に、そこそこの割合を占める基本データ(B、C)には、落ち着いた同系色(今回の例ではダークブルー)を使用します。これにより、グラフ全体に知的で統一感のある印象を与えられます。 - 一番伝えたい要素にだけ「アクセントカラー」を使う
ここが最大のポイントです!画像右上の注釈にもあるように、「強調したい要素のみにアクセントカラーを使用」します。今回の例では、最も割合が大きく注目してほしい「A(35%)」の項目だけに、目を引くオレンジ色を配置しました。
おまけ:色だけじゃない!プロっぽく見せる4つのグラフ調整テクニック
先ほどの「OK例」のグラフ、実は色を減らしただけでなく、グラフの「形」や「文字の配置」にも細かな調整を加えています。PowerPointのデフォルト設定から少し手を加えるだけで、資料のクオリティが跳ね上がる4つのテクニックをご紹介します。
- ドーナツの中央の空白を大きくする(抜け感の演出)
デフォルトのドーナツグラフは輪っかが太く、少し野暮ったい印象を与えがちです。中央の円(穴)のサイズを少し大きくしてあげることで、グラフ全体に「抜け感」が生まれ、スタイリッシュな印象になります。空いた中央のスペースに「合計値」や「メインメッセージ」を配置するのもおすすめです。 - データラベル(文字)を外に出す(視認性の向上)
NG例のようにグラフの中に文字(A, 35%など)を入れると、背景色と同化して読みにくくなってしまいます。文字はすべて「円の外側」に引き出しましょう。背景が白(または薄いグレー)の場所に文字を置くことで、コントラストがはっきりし、誰にとっても読みやすくなります。 - 項目の間の「隙間」を広げる(境界線の引き算)
グラフの各要素(A、B、C…)の間にある白い境界線を、デフォルトよりも少し太く設定しています。このわずかな「隙間」があることで、データ同士の区切りが明確になり、パッと見たときの認識スピードが上がります。これも立派な「隙間の引き算」ですね。 - 引き出し線は「水平・垂直・45度」&「先端は丸」(整列の美学)
アクセントカラーの解説を入れている「引き出し線」にもルールがあります。適当な角度で線を引くのではなく、「水平・垂直・45度」のいずれかに固定して引きましょう。これだけで図解に幾何学的な美しさと整頓された印象が生まれます。さらに、グラフを指し示す先端を「丸(ドット)」にすることで、「ここを指している」というターゲットが明確になります。
「神は細部に宿る」と言いますが、資料作成も同じです。
「色を絞る」という基本ルールに加えて、こうしたちょっとした「整列」や「隙間」の工夫を取り入れることで、あなたのスライドはさらに説得力を持つはずです。ぜひ試してみてください!
実践編:PowerPointで「色を絞る」具体的な設定方法
「理屈はわかったけれど、実際にどうやって色を変えればいいの?」という方に向けて、PowerPointですぐにできる2つのアプローチをご紹介します。
1. 手軽に直すなら「単色」や「グレー」を手動で選ぶ
すでに作ってしまったグラフや図形を直す場合、まずは不要な色を「手動でグレーアウト」するのが一番簡単です。
- 図形やグラフの要素を選択し、「図形の塗りつぶし」から「薄いグレー」を選択します。
- メインで目立たせたい部分だけ、テーマのカラーパレットから「青」などを選び直しましょう。
2. 根本的に解決するなら「カラーパレット」自体をカスタマイズする
「毎回デフォルトのカラフルな色が提案されて煩わしい!」という場合は、テーマの配色(カラーパレット)そのものを3色ルールに合わせて変更してしまうのが最強のテクニックです。
- PowerPointの画面上部にある「デザイン」タブを開く
- 「バリエーション」グループの右下にある下向き矢印(その他)をクリック
- 「配色」 > 「色のカスタマイズ」の順にクリック
- 「アクセント1」をメインカラー(青など)、「アクセント2」をアクセントカラー(オレンジなど)に設定し、残りの「アクセント3〜6」をすべて濃淡の違うグレーに設定して保存する。
これを行えば、以降は図形やグラフを挿入しても、自動的に「メインカラー+グレー」の落ち着いた配色になり、虹色スライドを未然に防ぐことができます。
まとめ:「色を足して目立たせる」からの卒業
「色を足して目立たせる」のではなく、「色を引いて情報を整理する」。
この「引き算」の思考を持つだけで、あなたの資料は驚くほど見やすく、説得力のあるものに変わります。今日から資料を作るときは、以下のルールを自分の中に設けてみてください。
まずは今手元にあるスライドから、不要な色を“引く”作業を始めてみませんか?
思考が整理された美しいスライドで、あなたの本当に伝えたい「本質」を相手に届けましょう!
さらにステップアップしたい技術者の方へ(関連記事)
今回の「色の引き算」ができたら、他の要素も引き算してさらにスライドを洗練させましょう。また、資料が完成した後の「プレゼン本番の話し方」もあわせてマスターするのがおすすめです!
▼ 他の「引き算」テクニック(ルール2・3)も知りたい方はこちら
▼ 資料ができたら次は実践!本番で相手に伝えるコツ




